税法だけの知識では定期借地権による法人化は理解できない(動画)


下記文書の音声解説>
.定期借地権の設定で土地が借地権と底地に分かれる
無償返還届出書方式は建物だけを法人所有とし、将来無償で借地権を返還することを条件に権利金の支払いを回避するものです。借地権の価値が否認されるため土地の法人化には土地を完全所有権価格で買取る必要があるのに対し、定期借地権設定方式は安い底地の買取で更地化が可能となります。
但し、ここでは金を掛けずにする法人化を主眼とするため、手順として当初、無償返還届出書方式と同様に建物だけを法人所有とし(権利金及び地代の支払規定なし)、更に土地を法人所有とするため底地の買取りを試みます。
2.金を掛けずに土地を法人所有に変える
底地の買取額を抑えるために、自ら所有する借地権価値と買取額との相殺を試みます。これに拠り支出を大幅に減額出来その際、借地権と底地の価額格差が20%(高い方の価格との格差)以内なら等価交換(譲渡がなかったもの)と見なされ、譲渡益課税の繰延が可能となります。交換手法の選択に拠り、土地の価額に関係なく価額格差が20%以内であることを条件とし、交換時点では土地(底地)購入資金及び利益課税支払額の調達が不要となることが当該方式の特徴です。
3.次に行うこと
交換した借地権を消滅させ、土地を底地から完全所有権の更地(自用地)に変えることです。借地借家法の条文では一般定期借地権は契約期間が50年以上(建物譲渡特約を付した場合は30年以上)契約解除が出来ないこととなっています。
ここで事業用定期借地権を例に考えて見ましょう。契約した地代が高く営業利益が悪化したため契約を解除して店舗を閉鎖したいと考えた場合でも、借地借家法が最低30年間は高い地代を払い続けることを強要する法だとすれば、果たして借地人擁護に合致する法律と云えるのでしょうか。
最高裁判例趣旨では借地人側からの契約解除に係る正当事由の主張なら、法で定めた期間未満でも解除は認められます。一般定期借地権も当初契約書において当事者の合意に拠り契約解除が出来る旨等の特約を付しておけば借地人からの解約申し出に拠り正当事由が緩和され、仮に賃貸人が不測の損害を被るのであれば、賠償を行うことで契約期間内の解除が可能となり借地権を消滅させることが出来ます。
4.税法だけの知識では理解できない
借地権と底地の所有者の交換に際し借地借家法の外、契約内容の同一性を担保するために民法513条等の理解が、建物売却による全部の建物賃料の喪失を防ぐに民法605条の2(賃貸人の地位の留保)の理解が必用です。
等価交換を選択すれば、地代や建物価格及び契約期間や各種利回りを適切な範囲内で検討することは不可欠です。節税目的に即した定期借地権設定契約書の作成には、特約事項の追加記載及びその合理的説明が求められ、これらは税法・借地借家法や民法・不動産鑑定評価の知識・経験が有機的に効果を発揮することで初めて可能となります。
5.定期借地権の設定により法人化を図る手法は今まで行われていない未知の手法です
そのため、相当時間を掛け考えられる問題点をリストアップしてその解決法を追求してきました。現在では問題点を指摘されても殆ど答えられると思います。
*クリック⇒「定期借地権と底地の交換による法人化」
例えば、当初定期借地権の契約を設定した場合、借地権と底地を全部を交換(所有者の名義変更)したなら借地借家法との関係で当初契約を解除し、再契約を行う必要があるとも考えられますが、「契約内容の同一性」が確保できるならば当該契約を同一の契約として継続できます。
契約期間とか地代等の契約内容が交換により変更しないのであれば契約内容の同一性は確保できると思えますが、仮に地代の支払者が法人から個人に変わることで地代支払い能力に格差が生じると見られれば契約解除を求められます。(*その場合の対策は契約書で対応可能)
そうであれば、支払地代を家賃収入から支払うこととし、当事者が各々家賃入金口座と地代支払い口座を同じにすることを契約で規定すれば、支払能力の違いは解消できます。
*クリック ⇒ 不動産の法人化手法の比較