金を掛けずに不動産の法人化(動画) 012-012 <1.建物売却後における賃貸人の地位の留保> 個人が土地・建物(共同住宅等)を保有する場合、建物のみを同族法人に売却すれば原則全部の賃料が法人口座に入金されますが、民法605条の2を活用することで建物を売却した個人が今まで通り賃貸人に地位を留保でき、継続して賃料を得られます。 ⇒ 売却により建物所有権は法人に移るため建物の一部又は全部を借りて、それを今まで通り貸す事となります。この際、土地利用形態を無償返還届出でなく、定期借地権とすることで土地が借地権と底地に分かれ、底地の買取り又は定期借地権と底地の交換に拠り少ない資金で土地の法人化が可能となります。土地利用に無償返還届出を選択すれば権利金の支払い及び高額な相当地代の支払いは回避できますが、土地の法人化には更地価額での買取りを行うため土地の法人化は遠のきます。これに対し、定期借地権設定方式では定期借地権設定につき権利金支払の慣習がないため、同様に権利金と相当地代の支払いの回避が可能です。 <2.契約に係る特約の付記> 借地借家法では建物譲渡特約を付した場合、建物は契約後30年後以降の買取ないしは借地人からの契約解除の申し出により借地権の消滅が図れます。最高裁判例趣旨では借地人側から契約解除に係る正当事由を主張すれば法で定めた期間未満でも契約解除は認められています。その際、事業用だけでなく一般定期借地権も当初契約書において、当事者の合意に拠り借地契約の解除が出来る旨の特約を付しておくべきです。 <3.定期借地権の活用は総合的な法知識が不可欠> 時間を掛けずに法人化を図るには底地の買取を、時間は掛かっても金を掛けない主旨なら底地と借地権との交換を選択できます。借地権と底地の等価交換はその価額格差が20%以内となることが条件で、これに拠り次に売却するまでの期間は課税の繰延べが可能となります。⇒ 交換が可能か否かは当初契約書の契約条件設定が大きな要因となりますが、節税目的に即した定期借地権設定契約書の作成に於ける特約事項の追加記載が重要であり、これらは税法・借地借家法や民法・不動産鑑定評価の知識・経験が有機的に効果を発揮することで初めて可能となります。 <4.土地利用権と不動産の法人化> ①無償返還届出書で対応すれば、土地は更地価格で買入れることとなります。 ②定期借地権を設定すれば、底地価格で買入れます。 ③複合的で幅広い知識を必要としますが、時間を掛ければ借地権と底地の交換の検討、及び一定期間経過後に建物の買取りに拠る借地権の消滅が可能です。交換のメリットは課税の繰延べにより交換時に資金調達が不要(課税時期が延長される)となることです。 <上記文書の音声解説> *クリック ⇒ 不動産の法人化手法の比較 <留意事項> 不動産を法人所有とすれば代表者の所有する非上場株式の価値が上昇しますが、被相続人が経営する法人ならば不動産を法人所有する前に株式を子等に移転し、子等の同族法人に移転する場合は同族法人の株主にならないことです。又、不動産賃貸業は規模が小さく事業承継税制の適用外となる場合が殆どです。詳細は事業承継税制の項目を参照してください。