相続税路線価での取引額ならば容認すべきか

東京地裁は市場時価の2割程安い取引は相当数存在する

1.<土地売買で相続税路線価での取引額は否認されるか>
市場時価(公示価格)で1億円なら相続税路線価格ベ-スでは8千万円となり、一般の市場取引において売買利益が生じれば法人では法人税法等、個人では所得税法等が課税されます。
又、最高裁判例時価は「適切な市場時価」で公示価格と同等程度と見なせます。時価を公示価格と同価値と特定すれば、相続税路線価での取引価格なら法人が買主なら公示価格との差額▲2千万円は受贈益となり法人税の課税対象となります。
これに対し東京地裁判例では2割程度安い取引は市場取引では相当数存在することから、これをもって著しく安い取引額とまでは云えないとしています。言い換えれば2割程度安くても適切な時価と云えることになります。
2.<時価(公示価格)より2割安くても適切な時価なのか>
大手デベロッパ-が大型団地を造成販売した際、会社の役員が友人に8,000万円で新築戸建住宅を販売している状況下で2割安い6,400万円で販売したことにつき、当該役員は会社の了解を得ず恩恵的な価額で売り渡したとして処分された場合、当該役員は東京地裁判例では2割程度安いことをもって違法な取引価格にはならないとし、会社の処分は不当と主張することは出来るのか。
3.<土地の適切な時価を国税庁や裁判所が決められるのか>
ア.土地の価格は不動産市場において良識ある市場人が行う適切な取引価格に基づき、「統計的判断から決められるべきもの」です。本件大型分譲団地は会社の判断で売出価額が決められており8,000万円が標準的価額と云えるはずです。従って2割安い売渡価格を地裁判例を根拠に処分されることは不当だとはなりません。
イ.相続路線価は時価(公示価格)の8割程度だから、相続税路線価(2割安い)での取引は税務署から必ず容認されると考えるべきではありません。
(8,000万円で戸建住宅が99戸販売され、1戸だけが6,400万円で販売された場合に6,400万円は2割以内だから適切な価額の範囲内とは云えない)
不動産の適切な時価は「市場人の経済行為として個別具体的に決められるもの」であり行政や司法が「物件の個別性に着目すること無しに」一律に2割以内なら適切と決めるものではないと云うことです。

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