不動産の法人化で安心老後

現在、個人所有の不動産の法人化(同族会社所有)の殆どが無償返還届出書を税務署に提出し中古建物のみを簿価(未償却残高)で法人所有とします。無償返還届出方式は土地(底地)及び建物(借地権)の各々の所有者が連名で所定の申請書を税務署に提出するだけで良く、難しい知識も手続きも不要です。
1.無償返還届出方式には以下のメリットがあります。

①高額な権利金の支払いが免除されます。
②適正地代(土地価格(相続税路線価)の6%の年間地代)以下の安い地代(公租公課の2倍~3倍程度)が設定できます。
③建物賃料の全部を 建物所有者の法人口座に入金させることが出来る。
④土地(被相続人所有)に係る相続税につき、被相続人が法人の株主でなければ自用地の20%減の土地価値で相続評価できる。
2.デメリットは以下の通りです。 

①高額な土地の相続税が子孫代々課税され、やがては土地を失う可能性があります。
②借地権価値がゼロのため、土地の購入に際し、自用地(更地)価額で購入することとなります。
3.事業用地の場合土地価格が高く相続税評価も高いため、他の土地を売却して相続税を支払うこととなる可能性が高く且つ、同族法人は資産として土地(所有権)を有するか、価値ゼロの借地権を有するかでは金融機関からの信用度も異なります。
又、個人地主にすれば、安く建物を売却したことや、建物の賃料のすべてを失うことは自身の生活にも支障が生じることとなります。 

<定期借地権設定方式による建物利用権の設定>
(1)定期借地権設定方式は無償返還届出方式が有する下記のメリット(①権利金支払いの免責 ②安い地代の支払い ③建物賃料の全部を法人口座に入金できる)のすべてを同様に有します。
更に、賃貸人の地位の留保(民法605条の2第2項)に拠り、建物譲渡人がそのまま旧来どうり賃貸人でいる措置が図れます(例えば、3階建の賃貸マンションの3階部分は
今まで通り旧所有者の口座に賃料が入金され、1階~2階部分の家賃は建物譲受人の口座に入る措置)。これにより、生活費に確保が可能になります(このことは契約書で特約として付記する必要があります)。
(2)定期借地権に基づく借地権と無償返還届出方式に拠る借地権との大きな違いは、借地権に価値を有するか否かです。借地権が市場価値を有するならば、底地と借地権との交換が可能です。借地人である同族法人が底地を買い取る場合、無償返還届出方式の借地人は土地を更地価格で買い取る必要があります。これに対し、定期借地権方式の借地人は土地を底地価格で買い取れます。更に、交換差額が20%以内なら、課税の繰り延べが適用され、交換時に課税(所得税・住民税)の支払いの必要はなく、底地と借地権の交換が可能となります。
(3)更に、一定期間(30年)が経過すれば建物の買取りが可能となる契約条件も付せられます。建物の買い取り(借地権買い取り)に拠り借地権は消滅し、同族法人は土地と建物を最小の費用で法人化できます。