無償返還届出を定期借地権に変更すれば

1.定期借地権方式での底地と借地権の交換
ⅰ.<定期借地権と底地の交換の骨子
何故、借地権でなく定期借地権なのか。借地権は権利金の支払いが慣習化されていますが(相続税路線価での借地権割合)、定期借地権は慣習化されておらず、支払いが義務化されていません。以下、定期借地権の特性について説明します。
① 定期借地権は権利金
支払の慣習がありません。
 ⇒
権利金を支払わない代わりに、
地代は借地権より幾分高めに設定されている場合が多いです。なお、無償返還方式での地代は将来借地権を無償で返還するため使用貸借と見なせない地代で良いとの説明がされていますが、定期借地権も契約期間が経過すれば(建物を取り壊し)無償で借地権を返還します。国税庁の回答書等の書面を見ても定期借地権に係る相当地代の具体的地代の記載はありませんが、同族法人等に対しては適切な地代の支払いを求めている様子は窺えます。定期借地権の地代は事業用で4%~5%程度、住宅用で2%~3%程度とされています。これと比較して明らかに安い地代と見なされない事が重要です。
定期借地権は経済価値を有します
定期借地権と底地の交換によって土地の法人化を図るには価額差額が重要となります。売買と異なり交換の場合は高額な土地でも価額に関係なく、価格が高い方の20%以内なら等価交換とみなし課税の繰延べが適用され、交換時における譲渡所得税・住民税は非課税となります(交換したら確定申告が必要)。
Ⅱ.<財産評価基本通達での定期借地権の査定額>
 ⇒
世間相場の適正な地代が払われていた場合、定期借地権契約で権利金や保証金等の一時金の支払いが行われていないか、若しくは安い一時金支払いとなっていれば相続税に於ける定期借地権の査定額は低位に査定されます。
Ⅲ.<交換の注意点>
 ⇒土地と建物は同種の固定資産ではないので、
建物は交換せずに単独で売買します底地と定期借地権+建物とを交換すれば交換が否認されることがあります。

2.借地契約の解約
ⅰ.
<定期借地権者の申し出による契約解除>
定期借地権者の申し出による契約解除は、これを契約に於ける特約事項としていれば可能です。同時に申し出人には合理的な解約理由が求められます
又、借地権者の事情により解約するのであれば、借地権者は立ち退き料等を請求する権利を有しません。故に、解約により定期借地権は契約期間内でも消滅させられます。

.<建物譲渡特約付定期借地権契約>
契約の期間内解約の外、当初契約
を建物を買い取り、定期借地権を消滅させる意思をもって契約を「建物譲渡特約付き定期借地権契約」とした場合、設定後30年以上経過すれば底地権者は借地権者から建物を買い取れ、合理的根拠がなくても借地契約を解約できます。
借地契約の解約によって底地と定期借地権の混同が生じ、土地は更地(自用地)となり、同族法人は土地の完全所有権を得ます。

3.相続に係る節税対策は生前対策が総て
ⅰ.<土地の法人化への過程>
(a)定期借地権の設定 ⇒ (b)定期借地権と底地の交換 ⇒ (c)定期借地権の解約、上記過程を経て定期借地契約の解約が可能となります。
借地権は土地に付随する権利であり基本的に土地所有者(底地権者)や定期借地権者の変更により定期借地契約が終了することも、契約期間が変更されることもありません。
Ⅱ.<定期借地権契約では特約内容が重要>
同族関係の場合、交換差額を課税当局から贈与と見なされる場合が少なくありません。それを回避するには
利害関係の無い第三者である不動産鑑定士の評価が効果的です。財産評価基本通達に基づく評価は被相続人に係る生前評価となるため、不動産鑑定士が不動産鑑定評価基準(国交省)が定めた評価手法に基づき、適正な評価をアンケイナク行っている限り税務署
(国税庁)はこれを否認できません
ⅲ.<交換では双方の価額格差が重視される>
契約書での支払地代額・契約期間・金利・採用する利回り等の数値により評価額が異なるため、採用すべき数値には合理性が求められます。又、
等価交換は土地価額には関係なく、双方の土地の価額格差が問題となるため、多額の土地を所有する者に於いては最良の減税手法です。

*次頁では同族法人の非上場の自社株対策について説明します。

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