5.無償返還届出方式による土地の法人化は困難
ア.⇒<定期借地権も権利金は免責される>
複数の賃貸建物を有する場合に管理会社(同族法人)を設立し、建物だけを身内が経営する同族会社で買い取れば(土地は高額なため買えない)、 家賃収入の全部が法人口座に振り込まれ、個人地主(被相続人)には安い地代が振り込まれることになります。これにより個人(被相続人)の財産が減少するため相続税対策としては有効です。この際、建物のための土地利用権(借地権)は無償返還届出書を連名で税務署に提出します。借地権者の法人はこれによって権利金支払いが免責され、地代は公租公課程度より高めの額を支払えば使用貸借とは見なされません。但し、無償返還方式での借地権は無償返還を前提とするため経済価値を有しません(売買や交換を対象としない借地権)。これが交換を前提とした土地の法人化を困難にします。
イ.⇒<経済価値を有する定期借地権とは>
定期借地権は市場価値を有し、多額の資金を要せずとも土地の法人化を可能とします。土地の法人化ができなければ高額な土地に係る相続税が永久に課税され続けられ、相続の度に財産が減少し続けます。ここでの借地権と底地の交換の効果とは、被相続人(個人)が借地権権者となり、借地権者であった同族法人が底地所有者となることです。
交換の場合、交換差額が高い方の20%以内ならば定期借地権と底地の交換は等価交換と見なされ、課税の繰延べが認められます。このことは交換時に於ける譲渡所得税や住民税が非課税となることを意味します。なお、確定申告は必要です。
ウ.⇒<国税通達に基づく定期借地権の査定額>
国税庁の財産評価基本通達では定期借地権の査定額は、一時金(権利金や保証金)の支払いが無ければ安い査定額となる数式となっており、法人が土地(底地や更地)の所有権者となる以前に被相続人が所有する同族法人の自社株を承継者に一括贈与(相続時精算課税制度)してしまうことが株価対策には効果があります。
エ.⇒<賃貸人の地位の留保>
又、被相続人が所有していた収益建物を同族法人に売却してしまえば被相続人(個人)は家賃収入の総てを失い、生活に支障が生じる場合もあります。その際、家賃収入の一部を今まで通り被相続人の個人口座に振り込ませることを可能とする賃貸人の地位の留保(民法605条の2)の適用を建物売買契約や底地と定期借地権との契約条件とすることも可能です。その場合、法人が被相続人に建物を安く貸し、被相続人がこれを転貸するやり方を採ります。なお、賃貸の場合は売買と異なり低廉譲渡の概念はありません。個人が安く貸せば贈与となりますが法人が安く貸しても贈与(受贈益)とはなりません。又、同族会社の行為計算の否認については、金額が過大でなければ検討されません。
無償返還届出を定期借地権に変更すれば
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