4.無償返還届出方式による土地の法人化は困難
ア.⇒<定期借地権は権利金が免責される>
複数の賃貸建物を有する場合に管理会社(同族法人)を設立し、建物だけを身内が経営する同族会社で買い取れば(土地は高額なため買えない)、 家賃収入の全部が法人口座に振り込まれ、個人地主(被相続人)には安い地代が振り込まれます。これにより個人(被相続人)の財産が減少するため相続税対策になります。この際、建物のための土地利用権(借地権)は無償返還届出書を連名で税務署に提出します。借地権者の法人はこれによって権利金支払いが免責され、地代は公租公課程度より高めの額を支払えば使用貸借とは見なされません。但し、無償返還する借地権は売買を前提とせず経済価値を有しません。この交換に基づく交換を前提とする土地の法人化を困難にします。
イ.⇒<経済価値を有する定期借地権>
これに対し定期借地権市場価値を有し交換により、多額の資金を要せずとも土地の法人化が可能となります。土地の法人化ができなければ高額な土地に係る相続税が将来に渡って永久に課税され続けられ、相続の度に財産が減少し続けます。借地権と底地の交換の効果は被相続人が定期地権者となることですが交換の場合、交換差額が高い方の20%以内ならば定期借地権と底地の交換が可能で、且つ課税の繰延べが認められ、交換時の譲渡所得税や住民税は課税されません。
ウ.⇒<国税通達に基づく定期借地権の評価>
借地権設定後に借地権と底地を交換した場合、同族法人は土地(底地)を所有し、個人(被相続人)は定期借地権を取得しますがその際、国税庁の財産評価基本通達では定期借地権価値は一時金(権利金や保証金)の支払いが無ければ安い査定額となる数式となっているので、法人が土地(底地や更地)の所有権者となる前に被相続人が所有する自社株を承継者に一括贈与(相続時精算課税制度)してしまうことが株価対策には重要です。
エ.⇒<賃貸人の地位の留保>
又、被相続人が所有していた収益建物を同族法人に安く売却してしまえば被相続人(個人)は家賃収入の総てを失い、生活に支障が生じる場合もあります。その際、家賃収入の一部を今まで通り被相続人の個人口座に振り込ませることを可能とする「賃貸人の地位の留保」(民法605条の2)の適用を建物売買契約や交換契約での契約条件とすることも可能です。
無償返還届出を定期借地権に変更すれば
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