<節税対策の基本的な考え方>
(1)<贈与か売買かは金額による>
金額が少ない場合は受贈者を増やせる「贈与形態」が節税対策として有利となる場合が多く、金額が張る不動産等の場合は契約条件を弾力的に設定し得る「売買形態」が有利です。(2)<相続時精算課税方式で相続人に贈与>
売買の場合は支払条件を弾力的に決められます。売買に於いて売主の親が有する子(子の会社)に対する代金受取請求権を相続時精算課税方式で相続人に贈与すると同時に、贈与した債権(現金)の合計は将来、相続財産に加算され相続税として課税されるため、加算額の減少を如何にして図るかが最大の問題点です。
(3)<時価評価を相続税路線価レベルに変える>
売買や相続時精算課税制度の贈与額は売買時点や贈与時点の時価評価なので、相続税の財産評価額としては何らの対策も施さない場合の方が相続税を引き下げます。
この時価を相続税額並みに下げられる可能性は不動産鑑定士の評価の活用次第です。(相続財産の具体的引き下げ手法は別項目で記載します。)
(4)<安直な借金は危険>
被相続人の財産に負債が過分に含まれれば節税に有利だから、借金して共同住宅を建築するべきと考える人がいますが、この借入金は時間の経年により減額され、逆に家賃収入の多くが相続財産に組み入れられることとなります。現金で持つより不動産で所有する方が有利とするのは現金額より固定資産税評価額が安いので、その差額分及び貸家建物及びその敷地であることの借家権減額分が相続税に係る評価を引き下げるためです。
但し、貸家建物を建築すべき立地条件を見誤れば賃料収入が少なく、建築費さえも返せない状況に陥ります。投資判断を誤ると惨事です。
<生命保険を使った複合的対策>
1.生命保険での対策
(1)相続税が無税となる
法定相続人が4名の場合、
イ.基礎控除は 3,000万円+(600万円×4名)=5.400万円 ①
ロ.生命保険の控除額は 500万円×4名=2.000万円 ②
ハ.控除額計 ①+②=7,400万円
従って、保険金受取額が2,000万円程度の生命保険に加入しておくことで、相続税の財産額が7,400万円以内なら相続税は掛かりません。
(2)個別具体的に対応すべき
財産が数億円の被相続人の場合は、この程度の減額では「焼け石に水」です。保険加入年齢が若ければ、被相続人(親)の相続発生時までの30年間(仮定)360ヶ月も保険金を払い続けなければ保険金は出ません。総ての人に効果ある対策はなく、個別具体的に最良のやり方を最良のやり方を判断する必要があります。但し、共通することは、財産額がそれ程多くない場合は不動産価値減額対策が最も重要です。又、財産額が多額の場合、不動産価値減額対策の外、自社株の評価減対策等、株価対策が重要となってきます。
(3)評価の落とし穴(不動産評価の専門家が求められる理由)
相続財産評価は多くは税理士が国税庁の評価基準に従って行いますが、共同住宅のような収益物件は基本的に積算価格で査定し、一定の借家権減額割合を乗ずる査定法となっています。何故でしょう。収益価格の求め方は賃料の多寡等に個別性が高く、評価の専門家でない税理士では評価出来ないため個別性を無視した一括大量方式を採用せざる得ないのです。ここで、最高裁判例時価は「市場における適正な時価」ですから、国税評価基準による税理士査定では判例時価との間で価格の整合性に矛盾が生じる場面が出てきます。何故なら市場は積算価格でなく投資採算性即ち、収益価格を標準として取引するからです。