親(個人)から子(個人)への共同住宅の移転

貸宅地(底地)に小規模宅地等の特例を検討

1.<使用貸借は借地権価値ゼロ>
(ⅰ)
親子間における子の建物のための土地利用権は使用貸借とし、子は親に地代を払っていないか、若しくは固定資産税程度の地代支払が殆どと思えます。相続税評価では
使用貸借は借地権価値ゼロで更地評価となります。
使用貸借の宅地は有償地代の支払がなく事業用地ではありません。このため小規模宅地等に係る「貸付事業用宅地等」の適用はありません。
そこでこの際、子(相続人)が親(被相続人)と借地契約を締結し、権利金(更地価額 × 借地権割合)(注)を支払い、通常地代(底地価格の6%程度)を支払えば土地は底地になり、有償貸付けによる「貸付事業用宅地等」の適用で200㎡迄は50%減評価となります。
6,000万円の土地時価で借地権割合60%の地域なら底地価格は40%の2,400万円ですが、貸付事業用宅地等の適用で更に、その50%減額の1,200万円が相続税評価額となります。(但し、他の小規模宅地等の特例との関係で適用地積は判断されます)
(注);権利金=借地権価値なので不動産鑑定評価により借地権価値(時価)を求められるはずです。相続と関係ない市場取引に係る税は所得税法や法人税法が適用されるので、税務上支障がなければ”更地価額(相続税路線価)× 借地権割合”と査定することも許されるが本来の司法秩序です。そうでなければ国(国土交通省)が定めた市場時価評価基準である不動産鑑定評価基準の軽視となります。国税庁通達時価はあくまでも最高裁判例時価(適正時価は市場時価であり行政の裁量時価ではない)の制約下にあります
2.<底地の取得と地代支払債務の消滅
(ⅱ)
権利金支払いを長期分割払いとします。相続発生時の未払権利金額(債務)を相続財産に加算し相続税として支払うことで、債権額自体の支払額でなく、これに対する税額で処理できるため節税が可能となります。更に当該底地を借地権者である子が相続すれば、底地+借地権=更地となり子の地代支払債務は消滅します。

尚、土地価額が大きくなければ、110万円基礎控除額を使った長期間贈与や納税時期を引延ばす相続税精算制度の贈与が検討できます。何れにしても、権利金自体の減額評価は不動産鑑定士の評価でしか具現化できません。

”グラフでの立件” 対策の有無につき赤点線に注目

1.<下図の図1(対策ありの場合)について>
赤点線は課税標準額。対策を行うと家賃収入が資産から負債に転換し相続税額が減少し続ける。
2.<下図の図2(対策なしの場合)について>
赤点線は課税標準額。対策を行わない場合、家賃収入が増加し相続税額が大きくなり続ける。

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